門司港が生んだ奇才
トーナス・カボチャラダムスの世界に酔う

 
心癒される空間「カボチャドキヤ国立美術館」

  • 昭和レトロに彩られた街に暮らす、生命力に満ち溢れた人々を描くトーナス・カボチャラダムスこと川原田徹館長の、油彩をはじめ、テンペラ画やエッチングといった技法で描かれた約100点の作品を展示する「カボチャドキヤ国立美術館」。
  • 「多くの子どもたちが本物の芸術に触れ、何かを感じ取れる場所でありたい」という館長の思いで、作品をより近くで見られるように作品の周りに囲いは一切ありません。古い洋館独特の吹き抜けの展示室や、アンティーク家具が置かれた展示室など、木漏れ日が差し込む落ち着いた空間の中で、ゆったりと作品を観賞することができます。
  • 作品最大の特徴は、館長が少年期を過ごした昭和30年代の活気溢れる門司港を原風景に、大勢の人々が楽しそうに生活する姿が細密に描かれているところにあります。門司港を知る人も、そうでない人も、どこか懐かしいと感じるのは、作品が織り成す独特な世界観と、古い洋館をリノベーション(建築再生)したことで残された、木の温もりや香りが絶妙なハーモニーを醸し出しているからではないでしょうか。

トーナス・カボチャラダムスの描く作品の魅力

  • 「この世界にはたくさんの人や生き物がいます。全てに命があり、全てが等価値なのです。だからこそ、それらを一つも欠かさず、省略なしに描くのが私の理想です」絵を描き続けて半世紀余り。これまでに描いた作品は、油彩からペン画まで、優に200点を超えます。そのディテールの高さゆえに、完成に1年以上を要する作品も多々あるそうです。
  • その中でも、代表作「かぼちゃのブリューゲル」は、約170㎝四方の巨大な油彩画で、圧倒する存在感を放っています。制作期間3年を要した大作で、海沿いにそびえる巨大なカボチャの表面が螺旋状の通路となり、それに沿うように昭和の雰囲気を醸し出す商店や住宅が立ち並びます。門司競輪も、栄町商店街も、山城屋もあります。店先で買い物をする人、電車に乗る人、温泉に入る人、紙芝居に見入る子どもたちや、酒を酌み交わす大人たち。笑い声や街のざわめきまでもが聞こえてきそうで、まるで自分が絵の中の一員になったような錯覚に陥ります。
  • 「いろいろな人を描かないと面白くない。人の暮らしが一番面白いから」表情が読み取れるほど、細密に再現された日常生活の描写からは、優しい温もりを感じると同時に、館長の生活や社会に対する鋭い観察眼と想像力が伺えます。「最近、少しだけ絵が上手くなりました」そう言ってほほ笑む館長の描く、繊細かつ、おおらかな自然賛美に彩られた世界観こそ、最大の魅力なのです。
主な作品紹介
  • にこにこ元気町
  • レンガ造りの愚者の船
  • トーナス・カボチャラダムスの作品をebookで読むことが出来ます。

「カボチャドキヤ国立美術館」館長 川原田 徹氏の軌跡

  • 裕福な家庭で育った館長は、建築家を志して東京大学に入学しましたが、「生きるとは」「自分とは」という、いわゆる「自分探し」に悩み大学を休学。引きこもり生活の中で、親しんでいたドイツの文学、思想、音楽、ドイツルネサンスの絵画などに導かれ、「植物も自分もこの世界の大きな自然という“神”の中に存在する、同じ生命体なのだ」と痛感したのです。自然の素晴らしさに目覚めてからは、独学でペン画と油絵を学び、故平野遼氏の勧めで銅板画も始め、ひたすら絵と向き合いました。そして、どの家庭の食卓にも登場する、ありふれたカボチャのもつ豊満な外見に、母なる大地の要素を感じ、カボチャを題材とした作品を次々と発表していったのです。
  • 画家として成功し、活躍の場を広げる館長でしたが、歴史ある住宅が多く残る門司区谷町で、古い建物が老朽化により解体の危機に瀕していることを知ります。1918(大正7)年に建てられた洋館の存続を望む市民とともに、「門司レトロ基金の会」を立ち上げ、日々奔走。その姿に感銘を受けたあるご夫妻から、「町の人が喜んでくれるのなら、私たちが買いましょう。子どもたちが喜ぶような、小さな美術館にしてください」と志を託されます。そして、2002(平成14)年、多くの人の思いが詰まった、世界で唯一の「カボチャドキヤ国立美術館」が開館し、館長に就任しました。「描き貯めているスケッチを基に、これからも新作をドンドン描きますよ!」と、73歳とは思えない若々しさと行動力で、「川原田 徹」の世界を描き続けているのです。

今こそ、「カボチャドキヤ国立美術館」へ!

  • 来館者に喜んでもらうことこそが自分の役割と、目を輝かせる館長ですが、「立つ鳥跡を濁さず」。自分自身が元気なうちに幕を下ろそうと、開館から20年の節目である、2022年5月5日の閉館を決意しました。閉館まで、まだまだ時間は十分にあります。初めての方も、リピーターの方も、老いも若きも「カボチャドキヤ国立美術館」へ足を運んでみてください。圧倒される芸術の息吹と心癒される空間に、必ず満足いただけると思います。

トーナス・カボチャラダムス = 川原田 徹(かわはらだ とおる)
 Profile
1944年 鹿児島市に生まれ、2歳の時に門司市に転居。県立小倉高校卒業後、東京大学に入学するものの、自分の生き方に迷い中退、門司へ帰郷。その後、独学で絵を学び、1981年「西部美術館大賞展」優秀賞を受賞。絵本やポスターの作成で人気を博す。1985年北九州市民文化賞、1991年小学館児童文化賞、2005年福岡県文化賞を受賞。トーナス・カボチャラダムスと改名し、2002年からは、カボチャドキヤ国立美術館の館長に就任する。これまでの著書に、銅板画集「かぼちゃ浄土」、「カボチャドキヤ」、絵本「かぼちゃごよみ」、「かぼちゃ人類学入門」などがある。
 
 

カボチャドキヤ国立美術館 施設案内 

所  在  地:北九州市門司区谷町2-6-32
電  話:093-331-5003
開館時間:11:00~16:00
開  館  日:土曜・祝日(日曜日は休館)
入  館  料:一般300円・中高生100円
     小学生以下無料
交  通:JR門司港駅から徒歩25分
     車5分(美術館横に駐車場2台あり)